舌側矯正の費用と期間はどのくらいかかる?
都内のIT企業で働くA子さんは、長年、少しガタガタした下の前歯が気になっていた。会議で発言する時や、同僚と談笑する時、無意識に口元を手で隠してしまう自分が嫌だった。歯列矯正をしたいけれど、もう三十代。今さら表側に金属の装置をつけるのは抵抗がある。そんな時、インターネットで「舌側矯正」という方法を知った。外からは見えないという魅力に心惹かれたA子さんは、早速いくつかのクリニックのウェブサイトを調べ始めた。そこでまず驚いたのが、その費用だった。多くのクリニックで、総額が百万円から百五十万円ほどかかることが分かった。表側矯正に比べて数十万円も高い。なぜこんなに差があるのだろうか。カウンセリングで話を聞くと、その理由が明らかになった。舌側矯正の装置は、一人ひとりの歯の裏側の複雑な形に合わせて精密に作られる完全なオーダーメイド品であること。そして、治療には非常に高度な技術が必要で、対応できる歯科医師も限られていることが、価格に反映されているのだという。次に気になったのは治療期間だ。A子さんの場合、部分的な矯正でも一年半から二年、その後の保定期間も含めると、トータルで三年以上かかる可能性があると説明された。決して短くはない期間だ。しかし、医師はこう付け加えた。「費用と時間はかかりますが、誰にも気づかれずにコンプレックスを解消できる価値は、それ以上にあると感じる方がほとんどですよ」。A子さんは、数年後の自分が自信を持って笑っている姿を想像した。これは、未来の自分への大きな投資なのかもしれない。彼女は、少し勇気を出して、この見えない矯正に挑戦してみることを心に決めたのだった。