矯正をきっかけに彼女が手に入れた健康的なライフスタイル
メーカーの事務として働くA子さんは、典型的な「お菓子好き」だった。デスクの引き出しには常にチョコレートやクッキーが常備され、仕事の合間につまむのがささやかな楽しみだった。そんな彼女が30歳を機に歯列矯正を始めた時、最初に直面したのは、その楽しみが奪われるという現実だった。矯正装置に食べ物が詰まるのがとにかく不快で、食後の歯磨きも驚くほど大変。キャラメルやガムは論外、大好きだったポテトチップスも、細かく砕けて装置に絡みつき、悲惨な状態になった。その煩わしさに根負けしたA子さんは、自然と間食をやめることになった。最初は口寂しさを感じたが、数週間もすると、それがないのが当たり前の日常になった。さらに、調整直後の痛みで固いものが食べられない時期を経験したことで、彼女の食事内容にも変化が訪れた。野菜はポトフやスムージーに、肉はひき肉料理や煮込み料理にと、自然と消化が良く、栄養バランスの取れた食事を工夫するようになったのだ。治療開始から3ヶ月が経つ頃、A子さんは体重が4キロ減っていることに気づいた。しかし、それは初期の痛みでやつれた時とは違う、健康的な変化だった。肌の調子も良く、体も軽い。彼女は、矯正治療が、自分の食生活を見直す絶好の機会になったことを実感した。治療が進み、歯並びが整ってくると、今度は「よく噛んで食べる」ことの心地よさを知った。一口一口を丁寧に味わうことで、少ない量でも満足感が得られるようになったのだ。矯正が終わる頃には、A子さんはすっかり健康的な食生活をマスターしていた。彼女が歯列矯正で手に入れたのは、美しい歯並びだけではない。自分自身の身体と向き合い、大切にするという、生涯にわたる素晴らしいライフスタイルそのものだった。