歯列矯正治療は、歯並びや噛み合わせの問題が原因となっているいびきに対しては、改善効果が期待できる治療法です。しかし、いびきの原因は非常に多岐にわたり、歯列矯正だけでは解決しないケースも少なくありません。もし、歯列矯正治療を受けたにもかかわらず、いびきが改善しない、あるいは歯並びには特に問題がないのにいびきがひどい、という場合は、他の原因を疑い、適切な対策を講じる必要があります。まず、最も一般的な原因の一つが「肥満」です。体重が増加すると、首周りや喉の内部にも脂肪がつき、気道が圧迫されて狭くなります。特に、BMI(体格指数)が高い方は、減量するだけでもいびきが大幅に改善されることがあります。食生活の見直しや適度な運動を心がけ、健康的な体重を維持することが大切です。次に、「鼻の疾患」もいびきの大きな原因となります。アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎(蓄膿症)、鼻中隔弯曲症(鼻の左右を仕切る壁が曲がっている状態)、鼻ポリープ(鼻茸)などがあると、鼻呼吸がしにくくなり、口呼吸を余儀なくされます。口呼吸は口腔内を乾燥させ、喉の粘膜の炎症や舌の沈下を引き起こし、いびきを悪化させます。これらの場合は、耳鼻咽喉科を受診し、適切な治療(薬物療法や手術など)を受けることで、鼻の通りが改善され、いびきも軽減される可能性があります。また、「扁桃腺やアデノイドの肥大」も、特に子供のいびきの原因としてよく見られます。これらが気道を物理的に狭めている場合は、耳鼻咽喉科での切除手術が検討されることもあります。さらに、「アルコールの摂取」や「睡眠薬・精神安定剤の服用」も、喉の筋肉を弛緩させ、気道を狭くするため、いびきを誘発・悪化させる原因となります。就寝前の飲酒は控え、薬については医師に相談し、影響の少ないものに変更できないか検討してみましょう。「喫煙」も、喉の粘膜に炎症を引き起こし、気道を狭めるため、禁煙することが望ましいです。「加齢」も、喉の筋肉が衰え、気道が狭くなりやすくなるため、いびきの原因となります。この場合は、喉の筋肉を鍛えるトレーニング(例えば、舌を前に突き出したり、口を大きく開け閉めしたりする運動など)が有効な場合があります。これらのように、いびきの原因は一つとは限りません。