「この歳から矯正なんて、もう遅いですよね?」40代、50代の方がカウンセリングに来られた際、よく口にされる言葉です。しかし、その考えは全くの誤解です。むしろ、40代からの歯列矯正は、見た目の美しさのためだけではない、「将来の健康を守るための投資」として、非常に大きな価値を持つのです。年齢を重ねると、お口の中には様々な変化が訪れます。長年の噛み癖や歯周病の進行によって歯が移動し、若い頃は気にならなかった歯並びの乱れが生じてくることがあります。ガタガタの歯並びは、歯ブラシが届きにくい場所を作り出し、プラークが溜まりやすくなるため、虫歯や歯周病のリスクを増大させます。歯周病は、歯を失う最大の原因であるだけでなく、糖尿病や心疾患など全身の病気との関連も指摘されています。歯並びを整え、清掃しやすい口腔環境を作ることは、将来的に自分の歯を一本でも多く残し、全身の健康を維持するために極めて重要なのです。また、噛み合わせのバランスが崩れると、特定の歯に過度な負担がかかったり、顎の関節に痛みが出たり、あるいは頭痛や肩こりの原因になったりすることもあります。歯列矯正によって正しい噛み合わせを取り戻すことは、こうした不調の改善に繋がる可能性も秘めています。もちろん、若い頃に比べて歯の動きがやや遅かったり、歯周組織の状態に、より一層の配慮が必要だったりといった注意点はあります。しかし、現代の矯正技術は進化しており、個々の状態に合わせた丁寧な治療計画を立てることで、安全で確実な治療が可能です。人生100年時代。これからの長い人生を、健康で快適に過ごすために。40代からの歯列矯正は、決して遅すぎることのない、賢明な自己投資と言えるでしょう。