IT企業に勤務するAさん(34歳)は、長年にわたり、ご自身の口元に二つの大きなコンプレックスを抱えていました。一つは、上下の歯が噛み合わない開咬という不正咬合。そしてもう一つは、過去の治療で増えてしまった多数の銀歯でした。特に下の奥歯はほとんどが銀歯で覆われており、大きく笑うことに強い抵抗を感じていました。歯列矯正で歯並びは治せるかもしれないけれど、銀歯だらけの口にさらに金属の装置が付くことを想像すると、なかなか治療に踏み切れませんでした。そんなAさんが当院のカウンセリングに訪れたのは、オンライン会議で画面に映る自分の姿を見る機会が増え、口元への意識がこれまで以上に高まったことがきっかけでした。初診時の口腔内診査と精密検査の結果、Aさんの懸念通り、いくつかの銀歯には縁の部分にわずかな隙間が見られ、二次カリエスのリスクが高い状態であることが判明しました。そこで、矯正専門医である院長は、一般歯科治療を行う提携クリニックと連携した治療計画を立案しました。まず、矯正治療を開始する前に、問題のある銀歯を数本やり直し、健全な状態に戻しました。その後、いよいよ矯正治療がスタート。Aさんの場合、銀歯へのブラケット接着には、金属接着専用のプライマーを用いるとともに、一部の歯には外れにくいバンドタイプの装置を使用しました。治療中のAさんは、私たちが驚くほど熱心にセルフケアに取り組まれました。銀歯と装置の境目を清掃するためのタフトブラシの使い方もすぐにマスターし、毎回の調整時も口腔内は非常に清潔に保たれていました。約二年半の治療期間を経て、装置を外した日。鏡に映る自分の歯並びを見たAさんは、感極まって涙ぐんでいました。噛み合わなかった上下の歯はぴったりと閉じ、長年の悩みだった開咬は完全に改善されていました。銀歯はまだありますが、整ったアーチの中に並んでいると、以前ほど気にならないとAさんは笑います。適切な事前の処置と、患者様自身の協力があれば、銀歯が多くても素晴らしい結果が得られることを証明した、感動的なケースとなりました。
銀歯が悩みだったAさんの歯列矯正物語