「歯列矯正をしよう」そう決意した私は、まず近所の評判の良いクリニックを含め、3つの矯正歯科のカウンセリングを予約した。これが、その後の私の矯正ライフを大きく左右する、重要な旅の始まりだった。1件目は、最新設備が整ったお洒落なクリニック。ウェブサイトも洗練されていて期待していたが、カウンセリングは歯科衛生士さんが中心で、先生が顔を出したのは最後の5分ほど。治療法の説明も、高価なマウスピース矯正のメリットばかりが強調され、私の細かい質問には少し面倒くさそうな顔をされたのが気になった。診断も、口の中を少し見ただけで「抜歯が必要ですね」と断言され、少し不安が残った。2件目は、昔からある地域密着型の歯科医院。先生はベテランのようで安心感はあったが、「うちのやり方はこれだから」と、ワイヤー矯正以外の選択肢は示してくれなかった。費用も口頭で伝えられただけで、内訳がよく分からない。アットホームな雰囲気は良かったけれど、二人三脚で進めるには、少し一方的な印象を受けた。そして、3件目。駅から少し歩く、決して大きくはないクリニックだった。しかし、ここで私は「ここだ」と直感した。まず、カウンセリングの時間が1時間も確保されており、歯科医師の先生自らが、私のコンプレックスや理想について、じっくりと耳を傾けてくれた。その後、レントゲン写真を見ながら、私の顎の骨格の特徴、歯並びが悪くなった原因を、素人の私にも分かるように丁寧に解説してくれたのだ。治療法も、ワイヤー、舌側、マウスピースそれぞれのメリットとデメリットを公平に説明し、「あなたのライフスタイルなら、これが一番合っているかもしれませんね」と、私の生活まで考慮した提案をしてくれた。費用についても、総額制であること、追加料金がかかるケースまで、書面で明確に示してくれた。技術や設備はもちろん大事だ。でも、それ以上に、患者一人の悩みに真摯に向き合い、納得いくまで対話してくれる姿勢こそが、信頼の証なのだと、このカウンセリング巡りを通して痛感した。