歯列矯正を考え始めた時、多くの歯科医院のウェブサイトや看板が目に入ります。その中で、どのような基準で選べば良いのか迷う方も多いでしょう。ここで一つの大きな指標となるのが、歯科医師が「日本矯正歯科学会」の「認定医」や「専門医」といった資格を持っているかどうかです。実は、「矯正歯科」という診療科目は、歯科医師免許さえあれば誰でも標榜することが可能です。つまり、矯正治療の経験がほとんどない歯科医師でも、「矯正歯科」を掲げて治療を行うことができてしまうのが現状なのです。しかし、歯列矯正は非常に専門性の高い分野です。歯を安全に、そして機能的かつ審美的に動かすためには、歯や顎の成長発育、生体力学などに関する深い知識と、豊富な臨床経験が不可欠です。そこで、一定水準以上の知識と技術を持つ歯科医師を患者さんが見分けるための制度として、学会による認定資格が存在します。中でも「日本矯正歯科学会」は、日本で最も権威のある矯正歯科の学術団体です。「認定医」になるためには、大学病院などの認定研修機関で5年以上の専門的なトレーニングを受け、学会の審査に合格し、さらに症例報告を行う必要があります。そして「専門医」は、その認定医の中でもさらに厳しい基準をクリアした、ごく少数の歯科医師にのみ与えられる、より高度な資格です。これらの資格を持つ歯科医師は、いわば矯正治療のスペシャリスト。常に最新の知識と技術を学び続けており、難易度の高い症例にも対応できる能力を持っています。もちろん、資格がない医師の中にも優秀な先生はいらっしゃいますが、患者さんが客観的な基準で専門家を選ぶ上で、この認定資格は極めて信頼性の高い判断材料となります。大切な歯と健康を預けるからこそ、その分野のプロフェッショナルである「認定医」や「専門医」を選ぶことが、安心して治療を任せるための第一歩なのです。
なぜ矯正歯科の認定医を選ぶべきなのか