私が25歳で歯列矯正を決意した理由
子供の頃から、自分の笑顔が好きではなかった。八重歯と、少しガタガタした前歯。親に「矯正したい」と言ったこともあったけれど、「チャームポイントだよ」とかわされ、いつしか自分でもそう言い聞かせるようになっていた。その考えが変わったのは、社会人3年目、25歳の時だった。仕事は営業職。お客様との商談やプレゼンテーションで、自分の話す口元に相手の視線がいくのを感じるたび、心のどこかで萎縮している自分がいた。自信を持って笑えない、はっきりと話せない。このままではいけない。長年のコンプレックスが、仕事のパフォーマンスにまで影響していることに気づいた時、私は本気で歯列矯正を決意した。学生時代と違い、今は自分で稼いだお金がある。誰に遠慮する必要もない。いくつかのクリニックを回り、カウンセリングを受けた。費用は決して安くはなかったけれど、これは未来の自分への投資だと思えば、迷いはなかった。私が選んだのは、目立ちにくい歯の裏側からの舌側矯正。治療が始まってからの2年間は、決して楽な道のりではなかった。食事のしにくさ、毎月の調整後の痛み、そして何より丁寧な歯磨きの手間。仕事で疲れて帰ってきた夜、心が折れそうになったことも一度や二度ではない。それでも、鏡を見るたびに少しずつ歯が動いていく様は、確実に私に勇気をくれた。そして装置が外れた日。綺麗に整った歯並びを見た瞬間、涙がこぼれた。長年の呪縛から解き放たれたような、晴れやかな気持ちだった。今では、初対面の人とも臆することなく話せるし、写真も満面の笑みで写ることができる。25歳という決断は、決して遅くはなかった。むしろ、自分の意志で、自分の力で人生を変えようと踏み出した、私にとっての最高のタイミングだったと確信している。