「歯列矯正に百万円は出せないけれど、この気になる前歯のガタガタだけ、どうにかならないかな…」。そんな悩みを抱えている方に、ぜひ知っていただきたいのが「部分矯正」という選択肢です。全体的な噛み合わせに大きな問題はなく、あくまで前歯の見た目を改善したいという場合に、この治療法は非常に有効な解決策となります。部分矯正とは、その名の通り、治療の範囲を限定して行う矯正治療です。一般的には、笑った時に見える上下の前歯6本ずつ、計12本程度を対象とします。奥歯は動かさず、気になる部分だけをピンポイントで整えるため、全体矯正に比べて多くのメリットがあります。最大の魅力は、やはり「費用」と「期間」です。治療範囲が狭いため、使用する装置の数も少なく、歯科医師の管理期間も短縮できます。その結果、費用は全体矯正の半分以下、数十万円程度で済むケースが多く、治療期間も数ヶ月から1年程度と、大幅に短縮されます。これは、費用や時間の制約で矯正を諦めていた方にとって、大きな希望となるでしょう。しかし、この手軽さには注意点もあります。部分矯正は、あくまで見た目の改善を主目的としており、奥歯を含めた全体の噛み合わせを根本的に治すことはできません。そのため、出っ歯や受け口の原因が骨格にある場合や、歯のガタつきが重度である場合など、適応できない症例も少なくありません。無理に部分矯正を行うと、一時的に見た目は良くなっても、後戻りしやすかったり、他の部分に不具合が生じたりするリスクもあります。したがって、最も重要なのは、自己判断せずに、まずは専門の矯正歯科で精密な診断を受けることです。あなたの悩みが部分矯正で解決できるのか、それとも全体矯正が必要なのか。専門家の目で正しく見極めてもらうことが、後悔しないための第一歩です。もしあなたが適応症例であれば、部分矯正は費用を抑えながら長年のコンプレックスを解消できる、非常にコストパフォーマンスの高い賢い選択となるはずです。
全体は無理でも前歯だけなら?部分矯正という賢い選択