歯列矯正でIPR(歯を削る処置)を受けた後は、その効果を最大限に引き出し、歯を健康に保つために、少しだけ日々のケアに気を配る必要があります。まず、IPRを受けて「すべきこと」の筆頭は、フッ素の積極的な活用です。IPRで削ったエナメル質の表面は、一時的に脱灰しやすい状態になることがあります。フッ素には歯の再石灰化を促進し、歯質を強化する働きがあるため、フッ素が高濃度で配合された歯磨き粉やジェル、洗口液などを日常的に使用することが非常に効果的です。また、IPRによって歯と歯の間の清掃性が格段に向上するため、これまで以上にデンタルフロスや歯間ブラシを丁寧に使う習慣をつけましょう。これは、IPRの最大のメリットを活かすことにも繋がります。一方で、「してはいけないこと」あるいは「注意すべきこと」もあります。処置直後は、エナメル質が薄くなった影響で、冷たいものや熱いものがしみやすくなる「知覚過敏」の症状が出ることがあります。これは一時的なものであることが多いですが、症状が辛い場合は、知覚過敏用の歯磨き粉を使用したり、極端に温度差のある飲食物を避けたりする工夫が必要です。また、削った直後の歯の表面は、コーヒーや紅茶、カレーなどの色の濃い飲食物による着色が起こりやすい状態です。処置当日から数日間は、こうした飲食物を控えるか、摂取後すぐに口をゆすぐなどのケアを心がけると良いでしょう。IPRは安全な処置ですが、その後のセルフケアが歯の将来を左右します。正しい知識を持ってケアを実践することが、美しく健康な歯並びを長く維持するための鍵となるのです。