いびきは、大人だけでなく子供にも見られる症状であり、その原因や対策は年齢によって異なるアプローチが必要となることがあります。歯列矯正治療も、いびき対策として有効な手段の一つとなり得ますが、子供と大人では、その治療方針や期待できる効果に違いがあります。まず、子供のいびきの場合です。子供のいびきの主な原因としては、アデノイド(鼻の奥にあるリンパ組織)や扁桃腺の肥大、アレルギー性鼻炎などによる鼻詰まり、そして歯並びや顎の骨格の問題(例えば、下顎が小さい、歯列のアーチが狭いなど)が挙げられます。特に、成長期のお子さんの場合、歯並びや顎の骨格の問題が気道に影響を与えているケースでは、早期の歯列矯正治療(咬合育成)が非常に有効です。例えば、下顎の成長が不十分で気道が狭くなっている場合は、下顎の成長を前方へ促すような機能的矯正装置を使用します。また、歯列のアーチが狭く、舌のスペースが不足している場合は、急速拡大装置などを用いてアーチを拡大し、舌が正しい位置に収まるように導きます。これらの治療は、顎の成長を利用して行うため、比較的スムーズに効果が現れやすく、将来的な本格矯正の必要性を軽減したり、いびきだけでなく、睡眠の質の向上や、顔貌の健やかな発育にも繋がったりする可能性があります。治療開始のタイミングとしては、小学校低学年頃から検討されることが多いです。次に、大人のいびきの場合です。大人のいびきの原因は、肥満、加齢による喉の筋肉の弛緩、飲酒、喫煙、そして歯並びや噛み合わせの問題などが複雑に絡み合っていることが多いです。歯列矯正治療が有効となるのは、やはり下顎の後退や小ささ、歯列のアーチの狭さ、口呼吸を誘発するような不正咬合などが原因となっている場合です。大人の場合は、顎の成長はすでに終了しているため、子供のような成長を利用した治療はできません。そのため、歯を動かすことで間接的に気道の確保を目指したり、場合によっては外科手術を伴う矯正治療(顎変形症治療)が必要となったりすることもあります。また、歯列矯正治療と並行して、スリープスプリント(口腔内装置)を使用することも、いびき改善に効果的です。これは、睡眠中に下顎を前方に固定することで気道を広げる装置で、歯列矯正で根本的な噛み合わせを治しながら、対症療法としていびきをコントロールするというアプローチです。