近年、美容医療の分野では、鼻の下から上唇までの距離を指す「人中」を短く見せる手術が人気を集めています。人中が短いと、顔が引き締まって見え、若々しく可愛らしい印象を与えるとされているからです。しかし、メスを入れる前に、一度立ち止まって考えてみてほしいことがあります。それは、あなたの口元の印象を決定づけている「土台」についてです。その土台とは、すなわち歯並びと骨格です。特に、前歯が前方に突出している出っ歯の状態では、上唇が前歯に押し上げられる形で前方に突き出します。すると、鼻の下の皮膚が引っ張られ、人中が実際よりも長く、間延びして見えてしまうのです。この状態でいくらメイクを工夫しても、根本的な解決にはなりません。ここで大きな力を発揮するのが、歯列矯正です。出っ歯を治すために前歯を後方に移動させる治療を行うと、上唇を押し上げていた土台そのものが下がります。その結果、持ち上げられていた上唇が自然な位置に下りてくるため、人中が物理的に短くなったように見える効果が期待できるのです。同時に、前に突き出ていた上唇のボリュームも落ち着き、すっきりとした印象に変わります。これは、表面的なアプローチである美容医療とは異なり、骨格という顔の構造の根本からアプローチする「土台美容」と呼べるものです。歯列矯正は、単に歯を綺麗に並べるだけではありません。顔全体のバランスを整え、唇の形、人中の長さ、Eラインといった美しさの重要な要素にまで影響を与える、非常にパワフルな美容的側面を持っているのです。