歯列矯正治療の目的は、単に歯を綺麗に並べることだけではありません。むしろ、それ以上に重要なのが、「正しい噛み合わせ(正常咬合)」を獲得し、口腔機能を最大限に発揮できるようにすることです。この「噛み合わせの改善」こそが、歯列矯正がもたらす最も本質的かつ重要な機能的メリットと言えるでしょう。では、正しい噛み合わせになると、具体的にどのような良いことがあるのでしょうか。まず、最も基本的な機能である「咀嚼(そしゃく)機能の向上」です。上下の歯が適切に接触し、効率よく連携して働くことで、食べ物をしっかりと噛み砕き、すり潰すことができるようになります。これにより、消化器系への負担が軽減され、栄養の吸収効率も高まります。また、よく噛むことは、唾液の分泌を促進し、口腔内の自浄作用を高めたり、消化を助けたりする効果もあります。さらに、しっかりと噛むことは、顎の骨や筋肉の発達を促し、脳への血流を増加させて脳を活性化させるという報告もあります。次に、「発音機能の改善」も期待できます。特定の歯並びの乱れ、例えば、前歯の間に隙間がある「すきっ歯(空隙歯列)」や、奥歯で噛んでも前歯が閉じない「開咬(かいこう)」などは、息が漏れやすく、サ行、タ行、ラ行などの発音が不明瞭になることがあります。歯列矯正によってこれらの不正咬合が改善されると、舌や唇の動きがスムーズになり、正しい調音点(音を作る場所)で発音できるようになるため、滑舌が良くなり、コミュニケーション能力の向上に繋がります。また、「顎関節への負担軽減」も重要な機能的メリットです。歯並びが悪く、噛み合わせが不安定な状態では、顎関節に不自然な力がかかったり、顎の動きが制限されたりして、顎関節症(顎の痛み、口が開きにくい、カクカク音がするなど)を引き起こすリスクが高まります。歯列矯正によって、上下の歯がバランス良く噛み合い、顎関節が安定した位置で機能できるようになると、顎関節への負担が軽減され、顎関節症の症状緩和や予防に繋がる可能性があります。さらに、噛み合わせの改善は、「全身のバランス」にも良い影響を与えることがあります。噛み合わせの不調和が、頭痛、肩こり、首のこり、姿勢の歪みといった不定愁訴の原因となっている場合があり、歯列矯正によってこれらの症状が改善されるケースも報告されています。
噛み合わせ改善が鍵!歯列矯正がもたらす機能的メリット