私は仕事柄、数年おきに転勤がある、いわゆる「転勤族」です。ずっと歯列矯正をしたかったのですが、「治療の途中で引っ越したらどうしよう」という不安から、長年踏み切れずにいました。しかし、30歳を目前にして「今始めなければ一生後悔する」と一念発起。転勤の可能性を前提とした、私なりの病院選びをスタートさせました。私が最も重視したのは、「転勤時の対応力」です。カウンセリングでは、まず最初に自分の状況を正直に伝え、「もし治療途中で遠方に引っ越すことになった場合、どのようなサポートをしていただけますか?」と全てのクリニックで質問しました。多くのクリニックは「紹介状を書きますよ」という一般的な回答でしたが、私が最終的に選んだクリニックの先生は違いました。「日本臨床矯正歯科医会などの全国規模の学会に所属しているので、転居先の信頼できる先生を探すお手伝いができます。治療経過のデータも全てお渡ししますので、スムーズに引き継げるように最大限協力します」と、具体的なネットワークを提示してくれたのです。この一言が、私の大きな安心材料となりました。また、通院のしやすさも工夫しました。どうせ通うなら、将来の転勤先からもアクセスしやすいように、新幹線の停車駅に近い、ターミナル駅周辺のクリニックを選びました。実際に治療開始から1年半後、私は大阪から東京への転勤が決まりました。すぐに担当医に相談すると、先生は約束通り、東京で腕の良い矯正歯科医を何人かリストアップしてくれました。治療データの入ったCD-ROMと紹介状を手に、紹介されたクリニックへ行くと、驚くほどスムーズに話が進み、ブランクなく治療を再開することができました。転勤や進学の可能性がある方は、治療を諦める必要はありません。大切なのは、事前にその可能性を医師と共有し、全国的なネットワークを持つクリニックを選ぶこと、そして引き継ぎに協力的な姿勢があるかどうかを見極めることです。計画的に準備すれば、住む場所が変わっても、理想の歯並びを目指す旅を続けることは十分に可能なのです。