「歯列矯正は、お金持ちがやるもの」。学生時代、私は本気でそう思っていました。ガタガタの歯並びがずっとコンプレックスだったけれど、実家に頼めるような金額ではないし、自分には一生縁のない話だと、無理やり自分に言い聞かせていました。その考えが変わったのは、社会人2年目の冬。ボーナスを手に、ふと思ったのです。「このお金を、ただ欲しかった服やバッグに使うんじゃなくて、ずっと悩んできた自分自身のために使えないだろうか」と。そこから私の挑戦が始まりました。まず、いくつかの矯正歯科のカウンセリングを巡り、費用について正直に相談しました。そこで出会ったのが、デンタルローンという選択肢です。頭金として貯めていたボーナスの一部を入れ、残りの金額をローンで支払う計画を立てました。月々の支払いは約一万円。これなら、毎月の給料から何とか捻出できる金額でした。飲み会を少し減らし、お弁当持参の日を増やす。そんなささやかな節約で、月々一万円の「未来への積立」が始まりました。治療が始まってからの2年間、支払いのことを忘れるくらい、私は自分の変化に夢中でした。鏡を見るたびに少しずつ動いていく歯。日に日に綺麗になっていく口元。それは、月々の支払いの負担感を遥かに上回る、大きな喜びと希望でした。痛みや不便さもありましたが、「あの高いお金を払っているんだから、絶対に綺麗になってやる」という思いが、私を強く支えてくれました。そして装置が外れた日。私は、お金では買えない、最高の財産を手に入れました。それは、綺麗に並んだ歯と、何物にも代えがたい「自信」です。もし昔の私のように、費用を理由に一歩を踏み出せないでいる人がいるなら、伝えたいです。諦める前に、方法を探してみて。計画を立てて、少しの勇気を出せば、見える景色はきっと変わるから。