頑固なエラの張りに悩んでいる方の中には、日常的な「歯ぎしり」や「食いしばり」の癖が、その大きな原因となっているケースが少なくありません。歯ぎしりや食いしばりは、無意識のうちに上下の歯を強くこすり合わせたり、ギリギリと噛み締めたりする行為で、これによりエラの部分にある咬筋(こうきん)が過剰に鍛えられ、肥大してしまうのです。そして、この歯ぎしりや食いしばりの背景には、実は歯並びや噛み合わせの不調和が隠れていることがあります。歯並びが悪く、特定の歯だけが強く当たっていたり、噛み合わせが不安定だったりすると、顎の位置を安定させようとして、無意識のうちに歯を強く噛みしめてしまうことがあります。また、ストレスや睡眠の質なども、歯ぎしりや食いしばりを誘発する要因として知られています。歯列矯正治療は、この歯並びや噛み合わせの不調和を改善することで、歯ぎしりや食いしばりの根本的な原因の一つにアプローチし、結果としてエラの張りの改善に繋がる可能性があります。具体的には、歯列矯正によって歯が正しい位置に並び、上下の歯が均等に、かつ安定して噛み合うようになると、特定の歯への過度な負担が軽減され、顎の位置も安定しやすくなります。これにより、無意識に行っていた歯ぎしりや食いしばりの頻度や強さが軽減されることが期待できるのです。咬筋への不必要な刺激が減ることで、過剰に発達していた筋肉のボリュームが自然と減少し、エラの張りが和らぎ、フェイスラインがシャープになるという好循環が生まれます。ただし、歯列矯正だけで全ての歯ぎしりや食いしばりが完全に治るわけではありません。ストレスなどの心理的な要因が強い場合や、長年の癖が染み付いている場合は、歯列矯正と並行して、他のアプローチも必要となることがあります。例えば、睡眠中に装着するナイトガード(マウスピース)は、歯ぎしりによる歯の摩耗を防ぐだけでなく、顎関節への負担を軽減し、咬筋の緊張を和らげる効果があります。また、日中に食いしばりをしている自覚がある場合は、意識して上下の歯を離すように心がけたり、リラックス法を試したりすることも有効です。歯列矯正は、歯ぎしりや食いしばりの原因となる「噛み合わせの悪さ」を改善するための重要な手段であり、それが結果としてエラの張りの改善にも繋がる可能性がある、ということを理解しておくと良いでしょう。